春の星雲・星団めぐり
M82に出現した超新星2014J



撮影日時:2012年2月18日 25:52〜26:222014年1月31日 27:15〜27:31
6分露出4コマをコンポジット3分露出6コマをコンポジット
光学系:ミード25cmシュミットカセグレン
+レデューサ (1600mm, F6.3)
ビクセン20cmバイザック
+レデューサ (1278mm, F6.4)
ミードLX200赤道儀+Pictor 201XT
にて自動ガイド
タカハシEM-200赤道儀にて自動ガイド
カメラ:キヤノンEOS Kiss X4(改造)
(ISO3200相当)
キヤノンEOS Kiss X5(改造)
(ISO3200相当)
撮影地:山梨県北杜市大泉町茨城県ひたちなか市平磯




撮影メモ: 2014年1月21日,ロンドン大学天文台で,M82に出現した超新星2014Jが発見されました。 この超新星は1月15日ごろに明るくなり始めていたことが確認されています。周辺の恒星の明るさとの比較から,この日の明るさは10.3等と測定しました。 1000万光年オーダーの近距離の系外星雲に超新星が現れるのはかなり珍しく,すぐ隣のM81に1993年に出現したSN 1993J(最大10.5等)以来のことです。 今後どのくらい明るくなるか注目を集めています。



超新星2014Jのスペクトル(2014/2/22, 3/22)と光度変化



SN2014Jと分光器のスリット位置(2/22, 北が上)
撮影日時:2014年2月22日 23:27から23:37にかけての5分露出の2コマをコンポジット
2014年3月22日 20:07から20:27にかけての10分露出の2コマをコンポジット
光学系:ミード25cmシュミットカセグレン (2500mm, F10.0)
+SBIG DSS7分光器 (スリット幅0.05mm)
ミードLX200赤道儀+Pictor 201XT にて完全自動ガイド
冷却CCDカメラ:SBIG ST-402ME (冷却温度-25℃(2/22), -30℃(3/22))
撮影地:山梨県北杜市大泉町

※グラフに貼り付けた上段のストリップはスペクトルの取得画像,
下段は4ピクセル幅を引き伸ばして擬似カラー処理したもの



吸収線Si IISi I
観測波長λm6140 Å5720 Å
文献値λ06355 Å5948 Å
青方偏移 z3.38×10-23.83×10-2
接近速度 V9.98×103 km/s1.13×104 km/s
膨張速度 V'1.04×104 km/s1.17×104 km/s

  z= (λ0m)/λ0
  V= c*((1+z)2-1)/((1+z)2+1)
  V'= V + 400 km/s (M82の後退速度)
 出現から38日後の2014年2月22日,および66日後の3月22日に観測した,SN2014Jのスペクトル画像と強度分布です。それぞれ白と黄色で示しています。 そのプロファイルには水素やヘリウムの吸収は見られず,シリコン(Si I, Si II),鉄などの広がった吸収線が顕著に観測されます。 これはIa型超新星の典型的な特徴で,連星系を作る白色矮星に一方の星から物質が移動し,臨界質量を越えて核反応が暴走した結果爆発に至ったものです。 なお,ナトリウム(Na I)の急峻な吸収線は,M82銀河内の星間ガスに由来するものと考えられます。
 超新星自体の吸収線のうち,6355Åの電離シリコン(Si II),および5948Åの中性シリコン(Si I)の2つの観測波長から,超新星の爆発に伴う視線方向の接近速度(=膨張速度)を推定することができます。 右の表には,2月22日のこれら2つの吸収線の極小波長の青方偏移から求めた膨張速度を示しています。 活動銀河であるM82の中心核には顕著な水素の輝線が見られ,この赤方偏移から,宇宙膨張によるM82自体の後退速度が求められます(測定結果)。 その値は約400km/sであり,その分を補正した,今回の超新星爆発の膨張速度V'は10,000から12,000km/sにも及ぶことがわかります。
 3月22日のプロファイルを2月22日のそれと比較すると,6355Åの電離シリコン吸収のドップラー分布に変化が見られます。 2月22日のデータで顕著な6140Åの吸収が弱くなり,本来の波長である6355Å付近の吸収も現れており,2つに分裂したように見えます。 これは爆発から時間が経過して物質の密度が希薄になり,膨張速度が遅い内部の吸収線が観測できるようになったものと解釈できます。
 下に示したのはSN2014Jの光学写真から求めた光度変化です。2月4日ごろに最大10.2等級に達した後緩やかに暗くなり,3月22日には約2等級ほど暗くなっています。

SN2014Jの光度変化
M81,M82のページに戻る




M64(黒眼銀河)

M94


御意見,御感想をお聞かせください。 →メールはこちらまで・・・

Copyright(c) 2014 by Naoyuki Kurita, All rights reserved.
ホームページ 春の星雲・星団写真集 おおぐま座