皆既日食中の空の明るさの変化(2017/8/21)
撮影日時: | 2017年8月21日,時刻は写真中に表記 (アメリカ太平洋夏時間) |
| プログラムオート撮影 (スポット測光) |
光学系: | シグマ4.5mm EX サーキュラーDC |
| 固定撮影 |
デジタルカメラ: | ニコンD50 (改造) |
撮影地: | アメリカ合衆国・オレゴン州セーラム市内 |
カメラ設定: | 画質モード…12bit CCD-RAW→16bit TIFF変換 (3008×2000) |
| CCD感度…ISO200相当,ホワイトバランス…マニュアル |
皆既日食時の空の明るさ(∝2^露光量)の変化
グラフ中の番号は各写真の番号に対応,
白いカーブは周辺減光効果を考慮した太陽が欠けた面積比より
計算される露光量の変化を示す。(日食前後の露光量LV
0=14.5と仮定)
撮影メモ:
この組写真は2017年8月21日の皆既日食の経過中に,全天魚眼レンズを付けたデジタルカメラでオート露出を行い,写野中央部(天頂)の空が一定の濃度に写るための露光量(ライトバリュー: LV)に応じて,明るさを人間の感覚に合わせて調整したものです。
グラフには1分間隔,皆既の前後10分間は10秒間隔で撮影した,ISO100相当のLV値の変化を示しています。
また参考として,部分食時の欠けた太陽の面積比が空の照度に比例すると仮定した計算値を白い実線で示しています。
計算には,太陽の周辺減光効果(Lim-darkening effect)を考慮しており,0.5LV以内の誤差で測定結果を再現できることがわかります。
皆既中に露光量が13段階小さくなり,空の明るさ(照度)が約1/8000(≒1/213)になったことが確認されました。
これは薄明中とほぼ同じ明るさです。天頂近くの金星がはっきりと見え,周囲の低空が夕焼けのように明るい状況がわずか2分間ながら観測されました。
2009年7月22日の皆既日食(中国・上海)との比較
皆既日食時の空の明るさ(∝2^露光量)の比較
●…2009/7/22の皆既日食(曇り・上海),
●…2017/8/21の皆既日食(快晴・セーラム)
実線のカーブは周辺減光効果を持つ太陽が欠けた面積比より
計算される露光量の変化を示す。
2回の皆既日食の比較
日付・観測地 | 2009/7/22, 上海 | 2017/8/21, セーラム |
サロス番号 | 136 | 145 |
皆既継続時間 | 5分50秒 | 1分52秒 |
皆既帯の幅 | 250 km | 140 km |
天候 | 曇り後雨 | 快晴 |
測定機材 | ニコンD50+ 15mm魚眼レンズ | ニコンD50+ 4.5mm全周魚眼レンズ |
測光方式 | スポット測光 | スポット測光 |
最小LV値,照度 (LV 0=2.5 Lux) | -1.33, 1.0 Lux | +2.35, 12.7 Lux |
照度の目安 | 満月の夜間 | 市民薄明 |
上のグラフは,今回の皆既日食と,2009年7月22日に上海で観測した,残念ながら曇りとなった皆既日食時の空の明るさの時間変化を比較したものです。ともに最大皆既時を基準とした相対時刻で表示しています。
これら2回の日食の皆既継続時間には3倍以上の違いがあり,空の明るさにも大きな差があることがわかります。2017年と2009年の日食の最大皆既時のLV値には3.7段階,照度に換算すると約13倍の違いがあります。
地上における皆既帯の幅が2倍弱異なるため,皆既帯の外からの漏洩光の量の違いが主な原因と考えられます。
2009年の最大皆既時の空の照度(1.0 Lux)は満月のある夜間と同程度であるのに対し,2017年のそれ(12.7 Lux)は日没直後の薄明(市民薄明)とほぼ同じ明るさです。
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