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現在ふつうに用いられている星座は,もともと古代バビロニア・メソポタミア地方などで発祥し,その後ヨーロッパで神話と関連付けられて発達したものがほとんどです。 しかし,星空に様々な事物を想像したのは西洋ばかりではありません。アジア,とりわけ中国では紀元前から天文学が発達し,実に多くの「星座」が独自に作り出され,高度に体系化していました。 ここでは中国星座の基本となる,黄道二十八宿の姿を実際の星空写真を使ってたどってみました。 |
●中国の星座
中国の星座の歴史は大変に長く,その起源は約3000年前といわれています。
私たちになじみの深いヨーロッパ起源の星座は,ギリシャ・ローマ神話,身近な人物・動物や道具をなぞっているのに対し,
中国の星座はひとつの国家体系を形成しています。夜空の日周運動の中心である北極星は「天帝」の座とされ,そのすぐそばをめぐる星たちには宮殿の庭園や官庁,役人といった, 高貴な事物をあてはめました。そして北極星から離れるに従い,庶民の住宅や市場など,次第に身分の低い存在を星座としました。 このように形作られた中国の星座は,そのひとつひとつがとても小さく,全体の数が非常に多いのが特徴です。3世紀に整理された段階で,実に300以上の「星座」が空にひしめいていました。 ●二十八宿(にじゅうはっしゅく)
現代星座で,太陽の通り道に当たる黄道が通る星座たちが「黄道12星座」ですが,中国星座の黄道12星座に相当するのが,「二十八宿」と呼ばれる28の星座です。黄道12星座は,太陽が12ヶ月かかって動く黄道を12等分したひとつひとつに当てはめたものです。 これに対して二十八宿は,月が27.5日かけて天球を1周するとき,一晩ごとに1つの「星座=星宿(せいしゅく)」を移動するように割り振られたものです。 黄道12星座の出発点は春分点(現在のうお座)ですが,二十八宿の起点は秋分点に近い「角宿(かくしゅく),おとめ座中央部」にあります。 この二十八宿は,太陽・月・惑星の位置と動きを表現することに用いられ,当時の天文学上も,非常に重要なものであったようです。 それぞれの星宿の中で,西端に位置する比較的明るい星を「距星(きょせい)」といいます。 そして東隣の距星との間の領域を,その距星の名前を付けた「宿」と呼んでいるわけです。 ●四神(ししん)
28の星宿は,7つずつの4つのグループに分けられます。順番に東,北,西,南の4つの方位に割り振り,それぞれの方位に青竜,玄武,白虎,朱雀という4つの獣神の姿をあてはめていました。
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番 号 | 四 神 | 星宿名 | 和訳名 | 現代星座での概略位置 | 距 星 | 写真への リンク |
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1 | 東 方 七 宿 ・ 青 竜 | 角 かく | スボシ | おとめ座中央部 | おとめ座α(スピカ) | 写真1 |
2 | 亢 こう | アミボシ | おとめ座東部 | おとめ座κ | ||
3 | 氏 てい | トモボシ | てんびん座 | てんびん座α(ズベン・エル・ゲヌビ) | 写真2 | |
4 | 房 ぼう | ソヒボシ | さそり座頭部 | さそり座π | 写真3 | |
5 | 心 しん | ナカゴボシ | さそり座中央部 | さそり座σ(アル・ニヤト) | ||
6 | 尾 び | アシタレボシ | さそり座尾部 | さそり座μ | ||
7 | 箕 き | ミボシ | いて座南部 | いて座γ(アル・ナスル) | 写真4 | |
8 | 北 方 七 宿 ・ 玄 武 | 斗 と | ヒキツボシ | いて座中央部(南斗六星) | いて座φ | |
9 | 牛 ぎゅう | イナミボシ | やぎ座 | やぎ座β(ダビー) | 写真5 | |
10 | 女 じょ | ウルキボシ | みずがめ座西端部 | みずがめ座ε(アル・バリ) | ||
11 | 虚 きょ | トミテボシ | みずがめ座西部 | みずがめ座β(サダルスウド) | ||
12 | 危 き | ウミヤメボシ | みずがめ座の一部+ペガスス座頭部 | みずがめ座α(サダルメリク) | ||
13 | 室 しつ | ハツヰボシ | ペガススの四辺形の西辺 | ペガスス座α(マルカブ) | 写真6 | |
14 | 壁 へき | ナマメボシ | ペガススの四辺形の東辺 | ペガスス座γ(アルゲニブ) | ||
15 | 西 方 七 宿 ・ 白 虎 | 奎 けい | トカキボシ | アンドロメダ座 | アンドロメダ座ζ | |
16 | 婁 ろう | タタラボシ | おひつじ座西部 | おひつじ座β(シェラタン) | 写真7 | |
17 | 胃 い | エキヘボシ | おひつじ座東部 | おひつじ座35番星 | ||
18 | 昂 ぼう | スバルボシ | すばる(プレアデス星団) | おうし座17番星(エレクトラ) | 写真8 | |
19 | 畢 ひつ | アメフリボシ | おうし座頭部(ヒアデス星団) | おうし座ε | ||
20 | 觜 し | トロキボシ | オリオン座頭部 | オリオン座λ(メイサ) | 写真9 | |
21 | 参 しん | カラスキボシ | オリオン座 | オリオン座δ(ミンタカ) | ||
22 | 南 方 七 宿 ・ 朱 雀 | 井 せい | チチリボシ | ふたご座南西部 | ふたご座μ(テジャト・ポステリオル) | 写真10 |
23 | 鬼 き | タマヲノボシ | かに座中央部 | かに座θ | ||
24 | 柳 りゅう | ヌリコボシ | うみへび座頭部 | うみへび座δ | 写真11 | |
25 | 星 せい | ホトヲリボシ | うみへび座の心臓部 | うみへび座α(アルファルド) | ||
26 | 張 ちょう | チリコボシ | うみへび座中央部 | うみへび座υ | ||
27 | 翼 よく | タスキボシ | コップ座 | コップ座α(アルケス) | 写真12 | |
28 | 軫 しん | ミツカケボシ | からす座 | からす座γ(ギェナー) |
ここに収録した12枚の写真の撮影範囲を示した星図です。写野を表す四角形をクリックすると,その写真のページにジャンプします。
(星図:アストロアーツ/ステラナビゲータ)
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