Hα太陽撮影用デジタルカメラの適性

撮影システム
 Hα太陽像の撮影セットアップ
…31.7mmスリーブにアダプタを介してボーグ製デジカメアダプタを接続
 Hα太陽望遠鏡は,当然ながら656.3nmの赤い単色を透過する望遠鏡なので,民生用のデジタルカメラを使用する撮影には,一般の天体写真以上に向き/不向きの差があるようです。
 当初,撮影に用いたオリンパス製C-5060WZ(500万画素)を用いると,かなりぼやけた画像しか得られませんでした。 しかし比較写真のように,ほとんど使っていなかった旧モデルのC-2020Z(200万画素)の白黒モードで撮影すると,驚くほど鮮明な画像が得られることがわかりました (左の写真はピントがずれているわけではありません)。
 コンパクトデジタルカメラ以外に,フジフイルムのFinePix S2Pro,ニコンD70の2種類の一眼レフデジタルカメラを用いた拡大撮影法も試みましたが,左の作例のような不鮮明な画像しか得られませんでした。 特にD70は星雲の撮影用にHαの感度を高めるフィルタ交換改造を行っていますが,好結果は得られません。CCD前面のローパスフィルタが原因ではないようです。 試した機種の適否一覧は下の表のようになります。

試用したデジタルカメラの適性
メーカーモデル画素数撮影法適否結果
オリンパスC-2020Z200万コリメート極めて鮮明に写る
オリンパスC-5060WZ500万コリメート×〜△おおまかな構造は写る
カシオQV-2800UX200万コリメート×全く写らない
フジフイルムFinePix S2Pro600万拡大×〜△おおまかな構造は写る
ニコンD70(フィルタ交換改造)600万拡大×〜△同上

 同一メーカーの同一シリーズのデジタルカメラであるにもかかわらず,これだけ大きな差が見られるはっきりした原因は不明です。 しかしネット上の他のユーザーの方の情報から考えられるのは,画像の記録段階でのアルゴリズムの影響です。 青や緑成分をほとんど(理論的には全く)含まない極めて特殊な画像を撮影した場合,近年のデジタルカメラに搭載されている,進化した画像処理アルゴリズムが一種の混乱を起こしている可能性があります。 それに対してC-2020Zは画素数が少なく,比較的「素直な」画像処理エンジンが用いられていると思われます。
 Hα太陽望遠鏡での観測・撮影を検討されている方は,使用するカメラ実機でのテスト撮影が必須です。



C5060WZによる作例 C-2020Zによる作例

左:オリンパスC-5060WZ,右:同C-2020Zによる,同一時刻のHα太陽像の比較作例
(ともにモノクロモード,ISO100,レンズを最望遠側にしてソーラーマックス40鏡筒+CEMAX25mmアイピースでコリメート撮影)

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