図1 2023年の衝前後の土星画像 i : 撮影時の土星の位相角 |
図2 土星画像の水平方向輝度分布の比較 黄色の矩形内の平均カウント値をMakali'i(マカリ) 2.1で取得 |
測定に使用した画像の撮影条件: | |
光学系: | 笠井20cm F6ニュートン反射(NERO-200DX), テレビューパワーメイト5X使用 (合成F35.8) |
タカハシEM-200赤道儀にて追尾 | |
カメラ: | ZWO ASI 183MC+赤外カットフィルタ |
撮影地: | 茨城県日立市,ひたちなか市平磯 |
カメラ設定: | 16フレーム/秒×130秒,露出…1/16秒 |
AutoStakkert3にて平均1300コマをスタック,Registax6にてウェーブレット変換処理 |
衝効果の原因としては,@環を構成する氷塊同士が作る影が,衝の前後に隠される効果,A細かい凹凸のある氷塊に入射した太陽光が,反射光と干渉して明るく見える効果(干渉性後方散乱),が有力と考えられていますが,双方の効果の寄与率は明らかになっていません。 図1は,2023年8月23日から9月9日に撮影した土星画像を並べたものです。 画像中の i は土星中心から見た地球と太陽の離角(位相角,phase angle)で,地球から土星を観測したとき,この値が小さいほど太陽光が土星を真正面から照らしています。 i = 0.22°となった衝の翌日(8/28),B環が最も明るく見えることがわかります。 図2は,土星の画像中に示した黄色の矩形内の輝度の水平方向分布を,土星本体の輝度を基準として重ねたものです。 8/23(白)と9/9(シアン)のB環の輝度は土星本体より低いのに対し,i が小さい衝の前後の輝度 (オレンジ,黄,マゼンタ)が増加しています。 図3は,B環の左右の輝度の最大値の平均を求め,位相角i の関数としてプロットしたものです。 縦軸は9/9のB環の輝度を基準とした相対値です。土星環の衝効果は,i が0.5°以下になるわずかな期間に現れます。今回の観測から,通常時より土星環が最大25%明るくなることが確認されました。 |
図4は,2021年と2023年の土星環の相対輝度の位相角依存性を重ねてプロットしたものです(2021年の観測結果)。 地球と土星の位置関係の違いにより,2023年の最小位相角は約0.2°で,2021年(約0.1°)より衝効果の観測条件は良くありませんでした。 しかし,同一の位相角における土星環の輝度は2023年の方が高いことがわかります。 これはグラフ中に挿入した土星画像のように,2023年の土星環は2021年より浅い角度から見ているため,環の単位面積当たりの輝度が高くなった効果によると考えられます。 |
2023年シーズンの土星観測画像 |
2022年シーズンの土星観測画像 |
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