2021年の土星環の衝効果(ハイリゲンシャイン)



図1 2021年の衝前後の土星画像

i : 撮影時の土星の位相角


図2 土星画像の水平方向輝度分布の比較

黄色の矩形内の平均カウント値をMakali'i(マカリ) 2.1で取得



測定に使用した画像の撮影条件:
光学系:笠井20cm F6ニュートン反射(NERO-200DX),
テレビューパワーメイト5X使用 (合成F35.8)
タカハシEM-200赤道儀にて追尾
カメラ:ZWO ASI 183MC+赤外カットフィルタ
撮影地:茨城県日立市

カメラ設定:16フレーム/秒×90秒,露出…1/16秒
AutoStakkert3にて平均1200コマをスタック,Registax6にてウェーブレット変換処理




図3 土星の位相角とB環の輝度の関係
撮影メモ: 2021年の土星は8/2にやぎ座で衝となりました。衝の前後数日間,土星の環が土星本体より明るく見える現象が知られており,衝効果(opposition surge),またはハイリゲンシャイン現象(Heiligenschein,ドイツ語で光背の意味)と呼ばれます。
 衝効果の原因としては,@環を構成する氷塊同士が作る影が,衝の前後に隠される効果,A細かい凹凸のある氷塊に入射した太陽光が,反射光と干渉して明るく見える効果(干渉性後方散乱),が有力と考えられていますが,双方の効果の寄与率は明らかになっていません。
 図1は,2021年7月20日から8月6日に撮影した土星画像を並べたものです。 画像中の i は土星中心から見た地球と太陽の離角(位相角,phase angle)で,地球から土星を観測したとき,この値が小さいほど太陽光が土星を真正面から照らしています。 i = 0.11°となった衝の前日(8/1),最も幅が広いB環が土星本体より明るいことがはっきりわかります。
 図2は,土星の画像中に示した黄色の矩形内の輝度の水平方向分布を,土星本体の輝度を基準として重ねたものです。 7/20 (白)と8/6 (シアン)のB環の輝度は土星本体とほぼ同じなのに対し,i が小さい衝の前後の輝度 (オレンジ,黄,マゼンタ)が増加しています。
 図3は,B環の左右の輝度の最大値の平均を求め,位相角 i の関数としてプロットしたものです。 縦軸は7/19のB環の輝度を基準とした相対値です。土星環の衝効果は,i が0.5°以下になるわずかな期間に現れます。今回の観測から,通常時より土星環が最大30%以上明るくなることが確認されました。




2021年シーズンの土星観測画像

2020年シーズンの土星観測画像


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