天体情報の凡例


1. 系外星雲(銀河)

a. タイプ

 銀河の外見上の形態分類は,エドウィン・ハッブルにより確立された楕円・渦巻・棒渦巻・不規則型の単純な分類方法を基本とし, その後フランスの天文学者・de Vaucouleursにより拡張された,より細かい特徴を反映させる分類法により記述しています。
 全体を楕円銀河(E),レンズ状銀河(S0),渦巻銀河(S),不規則銀河(I)の4種に大別します。 楕円銀河と渦巻銀河の中間的な特徴を持つものをハッブル分類にはない"レンズ状銀河"と定義します。 それに対して棒渦巻銀河は独立したグループとは考えません。各種類について,棒状構造がなければ"A", 棒状構造があれば"B",両者の中間的な場合には"AB"を付して,楕円銀河以外に普遍的に見られる特徴のひとつと解釈します。 (最近の研究では,楕円銀河にも棒状構造を持つ"棒楕円銀河"というタイプの存在が指摘されています)
 渦巻銀河は最も腕が閉じている0/a型から最も広がっているd型までに加え,マゼラン星雲のような不定形を表すm型までの10種に細分されます。 さらに,全体の形がS字状,あるいは中心バルジを取り巻くリング構造を持つなどの特徴に応じた記号を加えます。
 例えば,おおぐま座のM101銀河のタイプは"SAB(rs)cd"と表記されますが,これは棒状構造が未発達(SAB型)で腕がやや緩く巻いている(cd型)渦巻銀河で, 全体にS字状をしており,内部の腕が中心バルジをほぼ一周してリング状になっている様子(rs)を示します。

 渦巻銀河については,de Vaucouleurの形態分類記号の後ろにvan den Berghによる銀河の明度分類を表すロシア数字を加えて表記します。 太く発達した腕を持つI型からほとんど発達していない腕を持つV型までに分けられ,中間的な段階はI-IIなどと表記します。 M101銀河は腕が良く発達した銀河に分類されるので,"SAB(rs)cd I "と表記されます。

 ※銀河の分類に関する天文学的な理論付けなどの詳細な解説は,例えばここのサイトが参考になります(英語)。

  E.Hubbleによる銀河の形態分類
  1. 楕円銀河:E
    球状(E0)からレンズ状(E7)まで8段階

  2. 渦巻銀河:S
    渦が閉じている(Sa), 中間型(Sb), 渦が拡がっている(Sc), の3タイプ

  3. 棒渦巻銀河:SB
    渦が閉じている(SBa), 中間型(SBb), 渦が拡がっている(SBc), の3タイプ

  4. 不規則銀河:I, Ir

  5. EとSの中間: SO, EとSBの中間: SBO

  6. 特殊な形状には p を付ける(Sbp, E6pなど)

de Vaucouleursにより拡張された銀河の形態分類
種類(Class)族(Family)変種(Variety)段階(Stage)T型(Type)
楕円銀河 矮小銀河 -6cE
  楕円率(0-6)-5E0〜E6
  中間型-5E0-1 (例)
 巨大楕円銀河 -4E+
レンズ状銀河   S0 
棒構造なし   SA0
棒構造あり   SB0
混合   SAB0
 内部リングあり  S(r)0
 S字状  S(s)0
 混合  S(rs)0
  早期-3S0-
  中間期-2S0°
  晩期-1S0+
渦巻銀河棒構造なし   SA
棒構造あり   SB
混合   SAB
 内部リングあり  S(r)
 S字状  S(s)
 混合  S(rs)
  0/a0S0/a
  a1Sa
  ab2Sab
  b3Sb
  bc4Sbc
  c5Sc
  cd6Scd
  d7Sd
  dm8Sdm
  m9Sm
不規則銀河棒構造なし   IA
棒構造あり   IB
混合   IAB
 S字状  I(s)
  非マゼラン雲状90I0
  マゼラン雲状10Im
 矮小銀河 11cI
特異銀河   99Pec
 特異 pec 
(付加記号)  不確実 :
懐疑的 ?
紡錘状 sp
外部リングあり (R)
擬似外部リングあり (R')
※"T"の列の数字・記号は各タイプを表現するインデックス

b. その他のID

 広く用いられている天体カタログであるメシエ(M),NGC (New General Catalogue), IC (Index Catalogue)以外にも多くの銀河を含むカタログが存在し, その主な番号を表示しています。

略号正式名収録天体数特 徴
PGCPrincipal Galaxy Catalog983,261全天の18等級以上,最大規模の銀河カタログ
UGCUppsala General Catalog of Galaxies12,939パロマ天文台Sky Survey(POSS)による,視直径1分以上,光度14.5等以上の銀河,北半球のみ
UGCAUGC Galaxies (addendum) UGCカタログの南半球の補足
MCGMorphological Galaxy Catalog29,003POSSにより同定した,赤緯-30°以北の銀河
CGCGCatalog of Galaxies and Clusters of Galaxies9,134UGCに収録されない視直径1分以下,光度14.5等以上の銀河
ESOUppsala Survey of the ESO(B)Atlas 16,164ヨーロッパ南天天文台(ESO)のサーベイによる,赤緯-17°以南の銀河
IRASIRAS Point Source Catalog Version 2.0245,889IRAS赤外線天文衛星により観測した,全天の赤外線源
DDODavid Dunlop Observatory Catalog of Dwarf Galaxies222矮小銀河のカタログ
HCGHickson Compact Group463全天100個の密集銀河群と,それらを構成する銀河
Arp-338Halton Arpによる特異銀河。赤経順ではなく形態ごとにグループ分けして番号が付いている


c. 視線速度

 地球から観測した,各銀河の相対速度です。+は遠ざかり,−は近づいていることを示します。 赤方(青方)偏移の大きさから求められ,1000万光年以遠の銀河については,距離を推定する指標として使われます。


2. 銀河団

 銀河団のカタログとして用いられるAbellは,全天5250個の,銀河数50個以上,赤方偏移0.2以下の銀河団を網羅しています。
(赤方偏移z=Δλ/λ,λは観測波長,Δλはドップラーシフトによる波長の変分)
 銀河団のタイプ表記は3つの部分から構成され,それぞれ距離指標,集中度指標,主要銀河間の光度差(Blautz-Morgan指標)を表します。
タイプが"3 2 I-II"と表記される場合,距離指標3,集中度指標2,主要2銀河間の光度差がやや大きい,ことを表します。

3. 惑星状星雲

 NGC番号,IC番号を持たない惑星状星雲は,PK(Perek & Kohoutek)カタログ番号で表記しています。 1036個の惑星状星雲が登録されており,PK nnn±nn.nの形式で表されます。最初の2項はそれぞれ銀経・銀緯を1度単位で表した整数, 最後の番号はその範囲内の通し番号を示します。
 惑星状星雲のタイプは,その外見によりVorontsov-Velyaminovによる分類法を表記しています。
I…恒星状
II…一様な円盤状a…中心に向かって明るい
b…一様な明るさ
c…リング状構造あり
III…歪んだ円盤状a…明るさが不等
b…リング状構造あり
IV…リング構造
V…散光星雲状
VI…特異な形状


4. 散開星団

 可能な限り,星が最もまばらなもの c から最も密なもの g までの5段階で表したシャプレー(Shapley)の分類法と, 以下に示すトランプラー(Trumpler)の分類法を併記しています。 トランプラーの分類法は3つの部分からなり,それぞれ星の集中度,明るさの分布,星の数を表します。



5. 球状星団

 シャプレー/ソーヤー(shapley/Sawyer)による,集中度が最も高い I から最も低い XII までの12段階で表した分類法を表記しています。

6. 散光・反射・暗黒星雲

 リンズ(Lynd's)による分類法を表記しています。

発光星雲の分類法・・・2つの部分からなり,明るさと発光の種類を表します。

暗黒星雲の分類法・・・2つの部分からなり,背景の星野の遮蔽の度合い(不透明度)と形状を表します。

 メシエ,NGC,ICカタログ番号以外に,星雲を集めた主なカタログ番号を表記しています。
カタログ名正式名特 徴
Sh2Sharpless銀河系内の散光星雲を集めた総合的なカタログ
LBNLynd's Catalogue of Bright Nebulae 散光星雲と反射星雲を含むカタログ
RCWRodgers, Campbell, Whiteoak南半球の天の川のHα領域のカタログ
vdBvan den Bergh 銀河系内の反射星雲を集めた総合的なカタログ
BBarnard182個の暗黒星雲のカタログ
LDNLynd's Catalogue of Dark Nebulae 銀河系内の暗黒星雲を集めた総合的なカタログ