TEST REPORT
ニコンD70 デジタルカメラで
天体写真
フィルタ交換改造ニコンD70---


 ここ1,2年,低価格化が進むデジタル一眼レフカメラによる天体撮影が一般的になっています。 フィルムに比べてメリットが多いものの,赤い散光星雲が放つHα線に対する感度が低いという問題があります。 そこでCCD前面のローパスフィルタを交換して星雲の感度を高める改造が盛んに行われるようになり,良好な結果が得られています。
 ここでは2005年2月に入手したニコン製の普及価格帯デジカメ・D70に上述の改造を施して撮影した天体画像の作例をご紹介します。




 D70特有の特性として,長時間露出時に画面の隅にアンプによると思われる熱ノイズが大きく現れます。 カメラ自体の処理で消すことが可能ですが,露出と同じ時間がかかるため非常に効率が悪くなります。そこでフリーウェアのノイズ消去ソフト,「RAP」を用いることでPC上でのノイズ消去が可能になり,撮影現場でのノイズ処理が不要になります。 また,改造に伴いローパスフィルタの透過特性が長波長側に伸びて全体に赤味が強い画像となるため,ホワイトバランスの再調整は必須となります。
 私はRAW形式のまま様々な処理が可能な別売りの「Nikon Capture 4」を用いてできる限りの画像処理を行ってTIFF形式に変換し,その後一般の画像処理ソフトで複数コマのコンポジットを行って最終画像を得ています。一連の処理の流れは下のようになります。

@
A
B
撮影画像
(RAW)
ノイズ除去画像
(RAW)
各種調整後画像
(RAW→TIFF)
コンポジット画像
(TIFF)

@ RAPによるノイズ除去処理
A Nikon Capture 4によるホワイトバランス調整,レベル・カラー調整,およびTIFF形式での書き出し
B Photoshop, StellaImage 等の画像処理ソフトによる複数コマのコンポジット,各種微調整

 フィルタ交換によりHαの感度が高まり,天体写真用として大変満足のいく画像が得られますが,このページの最後に示す作例のように,一般撮影時はホワイトバランスのマニュアル調整が必要で,この点では大変使いにくいカメラとなります。
 D70が備える「デジタルイメージプログラム」といった便利な機能もホワイトバランスがオートに固定されるため,実用性は全くなくなります。改造に当たっては,こういったデメリットに対する割り切りが必要です。
(もちろんメーカー保証も受けられなくなります)

フィルタを交換したD70ボディ。左下が取り外した元のローパスフィルタ →
フィルタを交換したD70ボディ



1. カメラレンズでの作例写真

オリオン座 4分露出の一発撮りによるオリオン座。バーナードループ,馬頭星雲付近など,Hα輝線成分を持つ赤い星雲がはっきり捉えられている。 山梨県北杜市で撮影。
2005年2月11日 22:24 露出4分
AFズームニッコール24-85mm, f=35mm, 絞りF4.5, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

ばら星雲付近 望遠レンズで捉えたばら星雲付近の星野。星雲の複雑な構造がはっきりわかる。EDレンズ系では輝星の青にじみがやや目立つ。山梨県北杜市で撮影。
2005年2月11日 21:52〜22:06 露出4分×4コマ
タムロンSP 300mmF2.8, 絞りF4.0, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

夏の天の川 広角レンズで撮影した夏の天の川。Hα光を放つ赤い星雲の分布の様子がわかる。長野県小海町で撮影。
2005年4月16日 25:48〜26:01 露出4分×4コマ
AFズームニッコール24-85mm, f=24mm, 絞りF3.5,
タカハシEM-200赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

北アメリカ星雲 望遠ズームレンズで捉えたはくちょう座の北アメリカ星雲。茨城県常陸太田市で撮影。
2005年5月3日 24:28〜24:45 露出5分×4コマ
AFズームニッコールED 80-200mm, f=200mm, 絞りF2.8開放,
アイダスLPS-P1光害カットフィルタ使用,タカハシEM-200赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

2. タカハシ16cmイプシロンでの作例写真

馬頭星雲 オリオン座の馬頭星雲付近。フィルムでの撮影以上に細かい星雲の構造が描出されている。山梨県北杜市で撮影。

2005年2月11日 20:05〜20:18 露出4分×4コマ
タカハシ16cmイプシロン, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

くらげ星雲付近 ふたごの足元に位置する超新星残骸IC443付近。くらげ星雲の東側に広がる希薄なHα領域もわかる。山梨県北杜市で撮影。

2005年2月11日 22:37〜22:50 露出4分×4コマ
タカハシ16cmイプシロン, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

カリフォルニア星雲 ペルセウス座のカリフォルニア星雲のクローズアップ。山梨県北杜市で撮影。

2005年2月11日 19:31〜19:45 露出4分×4コマ
タカハシ16cmイプシロン, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

3. ミード25cmシュミットカセグレンでの作例写真

M101 おおぐま座の回転花火星雲M101を1600mmで捉えたもの。銀河の腕に沿って分布するHα領域がピンク色に描出されている。山梨県北杜市で撮影。

2005年2月11日 25:05〜25:40 露出10分×4コマ
ミード25cmシュミットカセグレン+レデューサ, ミードLX200赤道儀+Pictor 201XTにて自動ガイド
CCD感度:ISO1600相当
RAPでノイズ除去,Nikon Capture4でWB調整,レベル・カラー調整,Photoshop5.5でコンポジット
保存形式:12bit RAW→8bit TIFF(3008×2000)変換

4. 一般撮影におけるカラーバランスの崩れ

ホワイトバランス・オート 上の写真はホワイトバランスをオート設定で,下はプリセット機能を利用してマニュアル設定して撮影したもの。
オートのままでは赤味がかった画像となるが,マニュアル設定すれば一般撮影でも問題なく撮影可能。ともにISO200,85mmレンズでプログラムオート撮影

ホワイトバランス・プリセット


 
参考サイト



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