TEST REPORT
フジフィルムFinepix S2Pro デジタルカメラで
天体写真
フジフィルムFinepix S2Pro---


 2002年6月に発売された一眼レフデジタルカメラ・Finepix S2Proは驚異的な低ノイズCCDを備え, 天体写真適正が非常に高いことで天文雑誌などでも大々的に特集記事が組まれています。
 私はしばらく様子見をしていましたが,相反則不軌による長時間露光時の感度低下がなく,撮影効率が飛躍的に高まる上,画質劣化のないCCD-RAW出力に対応しており, 淡い銀河などの直焦撮影において,銀塩フィルムの代替機材に十分なり得ると判断し,2003年2月に導入しました。
 カメラ本体の詳しい使用感は,すでにいくつかのサイトで詳しく報告されているのでそちらを御参照下さい("手抜き"ともいいます)。
ここでは直焦写真を中心に,何点かの作例写真を御紹介します。





ミード25cm望遠鏡での直焦撮影。

タカハシ16cmイプシロン望遠鏡での直焦撮影



CAMERA SHOOTING SOFTWAREで撮影画像をプレビューしているところ
 CCD-RAW形式の1枚のファイル容量は約12MBあり,フラッシュメモリへの保存可能枚数は多くありません。 「ハイパーユーティリティソフトウェア」という,なんとも大げさな名前の別売りアプリケーションに含まれるCAMERA SHOOTING SOFTWAREを使うと,IEEE1394接続でカメラからパソコンに撮影画像を自動転送できます。 その気になれば一晩で100コマ近い撮影が可能で,総容量はすぐに1GBを超えてしまいます。 こうすることで容量不足の問題がなくなり,加えてPCモニタで画像をリアルタイムで確認できるので大変効率的です。 たまたま仕事用に使っていたノートPCにIEEE1394端子が装備されていたので,AC電源が使える観測所ではこのスタイルで撮影しています。
 フィルムをメインに撮影してきた私としては,撮影成果がハードディスクの中というのは心もとなく,現地でCD-RWにバックアップをとって持ち帰ります。  画像処理は自宅のデスクトップPCで,専用ソフト(RAW FILE CONVERTER EX)で16bit TIFF形式に変換して行っています。 フルサイズの1212万画素(4256×2848)だと1枚あたり65MBにもなってしまい,現在のPCではパワー不足です。そこで609万画素相当(3024×2016)のサイズを標準として処理を行っています。



※ここに掲載した写真は特に断らない限り,オリジナルTIFF画像をトリミングせずに1024×683ピクセルに縮小し, ファイルサイズが100KB前後になるように圧縮率を調整したJPEG形式です。
また,あえてノイズ除去処理は行っていません。

1. カメラレンズでの作例写真

しし座 フィルム換算で35mmの広角レンズで撮影したしし座。特に画像処理は行っていないが,ノイズはほとんど目立たず,フィルムでの写真と区別がつかない。 山梨県大泉村で撮影。
2003年2月28日 25:14 露出4分
AFズームニッコール24-50mm, f=24mm, 絞りF3.3開放, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:オート
画像処理は行っていない
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

こと座 ディフュージョンフィルタを用いて輝星をにじませて撮影したこと座。星の微妙な色合いの再現は実用上問題ないレベル。茨城県里美村で撮影。
2003年5月1日 23:27, 23:33, 23:37 露出5分の3コマをコンポジット
AFズームニッコール24-85mm, f=50mm, 絞りF3.6開放, ケンコースカイメモ赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:オート
画像処理は行っていない
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

夏の天の川(15mm)

夏の天の川(24mm)
広角レンズで撮影した夏の天の川2点。複雑に入り組む暗黒帯など,フィルムと変わらずに描出されている。 ともに長野県小海町で撮影。
(上)2003年4月28日 25:58 露出4分
シグマ 15mmF2.8 EX FISHEYE, 絞りF3.4, ケンコースカイメモ赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換
(下)2003年4月28日 27:24, 27:28, 27:34 露出4分の3コマをコンポジット
AFズームニッコール24-50mm, f=24mm, 絞りF3.3開放, タカハシEM-200赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M8〜M24付近 中望遠レンズで撮影したいて座付近の天の川。星雲・星団がいくつも分布している様子がわかる。茨城県里美村で撮影。
2003年5月1日 26:22, 26:28 露出5分の2コマをコンポジット
AFズームニッコール24-85mm, f=85mm, 絞りF4.0開放, ケンコースカイメモ赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

プレセペ星団と木星 プレセペ星団M44と接近中の木星。180mm望遠レンズはフィルム換算で250mmに相当する。露出3分でここまで写る。山梨県大泉村で撮影。
2003年2月28日 25:45, 25:49 露出3分の2コマをコンポジット
タムロンSP 180mm F2.5, 絞りF3.5, タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:太陽光
コンポジット以外,画像処理は行っていない
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M24付近 180mm望遠レンズで撮影したいて座スタークラウド(M24)付近。茨城県北茨城市で撮影。
2003年5月3日 26:46, 26:52, 26:58 露出5分の3コマをコンポジット
タムロンSP 180mm F2.5, 絞りF2.5開放, タカハシEM-200赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M8, M20と火星 300mm望遠レンズで撮影したM8, M20と火星のランデブー。M8の東方に広がる淡い散光星雲(IC1274)の流れがかすかに写っている。山梨県大泉村で撮影。
未処理画像
2003年3月8日 27:56, 27:59, 28:03, 28:06 露出3分の4コマをコンポジット
タムロンSP 300mm F2.8, 絞り開放 タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO400相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

2. タカハシ16cmイプシロンでの作例写真

M42 露出2分の一発撮りによるオリオン大星雲。薄雲あり。山梨県大泉村で撮影。

未処理画像
2003年2月28日 22:31 露出2分
タカハシ16cmイプシロン (530mm, F3.3), タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M51 りょうけん座の「子持ち銀河」。2つの銀河をつなぐ腕,周辺部の淡い光芒もフィルムと変わりなく写っている。山梨県大泉村で撮影。

未処理画像
2003年2月28日 27:30, 27:36, 27:41 露出5分の3コマをコンポジット
タカハシ16cmイプシロン (530mm, F3.3), タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M51拡大 上のM51のオリジナル画像の中心部1024×683ピクセル分をトリミングし,原寸大で示したもの。スポットノイズの分布の様子がわかる。 (コンポジットしているため,ノイズが線状になっている)


M65, M66, NGC3628 しし座の後ろ足に位置する3つの系外星雲,M65, M66, NGC3628。渦巻の微妙な構造,暗黒帯などがはっきりわかる。山梨県大泉村で撮影。

未処理画像
2003年2月28日 25:58, 26:03, 26:08 露出4分の3コマをコンポジット
タカハシ16cmイプシロン (530mm, F3.3), タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M81, M82 おおぐま座の2つの系外星雲,M81とM82。雲のため複数コマの撮影ができなかったのでコンポジットは行っていない。薄雲が通過する中での撮影。山梨県大泉村で撮影。

未処理画像
2003年2月28日 26:30 露出5分
タカハシ16cmイプシロン (530mm, F3.3), タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

M8 いて座の干潟星雲M8。赤い散光星雲の感度は低いが,強力な画像処理で浮かび上がらせてみたもの。低空のもやと甲府方面の光害のため,光害カットフィルタを使用している。山梨県大泉村で撮影。

未処理画像
2003年2月28日 28:34, 28:40, 28:46 露出5分の3コマをコンポジット
タカハシ16cmイプシロン (530mm, F3.3), タカハシJP赤道儀でノータッチガイド
アイダスLPS-P1光害カットフィルタ使用
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整,Stellaimage3.0でRGB3色分解,R画像を輝度情報としてLRGBカラー合成
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

3. ミード25cmシュミットカセグレンによる作例写真

M13 ヘルクレス座の球状星団M13を1600mmで撮影したもの。月明下での撮影だが,明るい対象に対しては良い結果が得られる。山梨県大泉村で撮影。

2003年2月14日 27:09, 27:14, 27:19, 27:23 露出4分30秒の4コマをコンポジット
ミード25cmシュミットカセグレン+レデューサ (1600mm, F6.3)
ミードLX200赤道儀+Pictor 201XTで自動ガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→8bit TIFF(3024×2016)変換

M57 こと座のリング星雲・M57。低空だったため,シーイングにより星像がかなり肥大している。 惑星状星雲は青っぽく写り,フィルムでいうとフジカラースペリアシリーズに似た印象。月明下の山梨県大泉村で撮影。

2003年2月14日 27:53, 27:58, 28:03, 28:07 露出4分30秒の4コマをコンポジット
ミード25cmシュミットカセグレン+レデューサ (1600mm, F6.3)
ミードLX200赤道儀+Pictor 201XTで自動ガイド
CCD感度:ISO800相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

黒眼銀河M64 かみのけ座の黒眼銀河M64を最高感度のISO1600で7分露光したもの(気温-3℃)。淡い周辺部までよく描出できているがさすがにノイズが多くなり,何らかの除去処理が必要なレベルとなる。 対象をずらして撮影した複数コマを加算平均することで,ノイズを目立たなくすることができる。山梨県大泉村で撮影。
未処理画像
2003年3月7日 25:39, 25:47, 25:55 露出7分の3コマをコンポジット
ミード25cmシュミットカセグレン+レデューサ (1600mm, F6.3)
ミードLX200赤道儀+Pictor 201XTで自動ガイド
CCD感度:ISO1600相当,ホワイトバランス:太陽光
Photoshop5.5でカラーバランス,レベル調整
保存形式:12bit CCD-RAW→16bit TIFF(3024×2016)変換

おまけ ・・・もちろんこのような写真もきれいに撮れます(このセクションの写真は800×600です)

韮崎・わに塚の桜 山梨県韮崎市・釜無川の段丘上で八ヶ岳を背景にそびえるエドヒガンザクラの巨木(樹高約17m)。満開の日曜日とあって,周りはカメラマンでいっぱいでした。

2003年4月13日 13:39 露出1/250秒
AFズームニッコール24-50mm, f=37mm, F8.0 (プログラムオート)
CCD感度:ISO100相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でアンシャープマスク処理
保存形式:JPEG-FINE(4256×2848)

ソメイヨシノ 韮崎市・武田八幡宮の境内で撮影したソメイヨシノ。

2003年4月13日 13:19 露出1/750秒
AFズームニッコール24-50mm, f=50mm, F4.5開放 (絞り優先オート)
CCD感度:ISO100相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でアンシャープマスク処理
保存形式:JPEG-FINE(4256×2848)

こいのぼり 五月晴れの空に泳ぐこいのぼり。山梨県高根町・花の森公園にて撮影。
2003年4月29日 9:22 露出1/250秒
シグマ 15mmF2.8 EXフィッシュアイ, 絞りF8.0 (プログラムオート)
CCD感度:ISO100相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でアンシャープマスク処理
保存形式:JPEG-FINE(3024×2016)

日の出 日の出と夜明けの空。茨城県北茨城市にて撮影。
2003年5月4日 5:05 露出1/250秒
AFズームニッコール24-85mm, f=24mm, 絞りF8.0 (プログラムオート)
CCD感度:ISO100相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でアンシャープマスク処理
保存形式:JPEG-FINE(3024×2016)

マクロ撮影 天体写真の対極ともいえる対象・マクロ撮影の作例。(こういう撮影は苦手です・・・)
2003年5月10日 11:38 露出1/500秒
AFズームニッコール24-85mm, f=85mm, 絞りF4.0開放 (絞り優先オート,マクロモード)
CCD感度:ISO100相当,ホワイトバランス:オート
Photoshop5.5でアンシャープマスク処理
保存形式:JPEG-FINE(3024×2016)



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